討論・2016年9月

平成28年第3回定例会 野村羊子討論

議案第44号 三鷹市公衆便所の設置および管理に関する条例の一部を改正する条例

◯16番(野村羊子さん)  それでは、議案第44号 三鷹市公衆便所の設置および管理に関する条例の一部を改正する条例について、質疑をいたします。
北野三丁目公衆トイレを廃止するわけですけれども、このトイレの利用状況と代替施設の設置はないのかについて、まず質問します。また、廃止の場合の解体撤去費用について、どうなるのか。撤去工事はいつを予定しているのか。市民への告知、周知はいつから、どのように行う予定なのかについてお伺いいたします。お願いいたします。

◯16番(野村羊子さん)  このトイレの廃止は、外環道路の工事によってであるということです。もともとバス利用者、公共交通利用者のためということですけれども、外環工事による市民への不利益変更ということは極力ないようにすべきであると考えます。ですから、費用について、今、当初予算で計上されているとしましたが、これはやはり国が本来補填すべきものではないか。同時に、国が代替施設をちゃんと確保できるようにすべきではないかというふうに考えます。それについて国と交渉したのかどうか。バリアフリーの車椅子対応のトイレと言いますけど、これも仮設であるんですね。ちゃんと仮設で車椅子対応の利用ができるトイレというのは設置可能なんですよ。そういうのはちゃんと出ているので、そういうことを含めた、国に対して、あるいは事業者に対して、工事のことに伴って市民へ不利益変更させないように、市としては交渉すべきではなかったかと思いますが、そのようなことはしたのかどうかお願いいたします。

◯16番(野村羊子さん)  討論させていただきます。
本条例改正案のうち、名称変更については、時代に即したものであり、反対するものではありません。しかし、北野三丁目公衆トイレの廃止は、東京外郭環状道路工事による市民への不利益変更です。そもそも環境破壊であり、最新調査結果を使っての計算もできないような費用対効果しか示せず、さまざまな市民への不利益、被害をまき散らしているこの東京外環道路の建設工事は中止すべきです。建設工事の市民への被害を食いとめようとする立場から、代替施設によって不利益を最小限にとどめることすらできないような状態では、この三丁目公衆トイレ廃止には反対とせざるを得ません。


議案第41号 三鷹市生涯学習審議会条例

◯16番(野村羊子さん)  委員会付託の議案について、委員会に所属してない会派として質疑をさせていただきます。
議案第41号 三鷹市生涯学習審議会条例の制定について、2点質問いたします。
まずは、審議会の中立性の確保についてです。この審議会は、さきに廃止された公民館運営審議会の代替として設置されると理解します。そこで、社会教育を含む生涯学習の教育の中立性を保つため、市長の諮問だけではなく、審議会独自の調査研究などが確保されているのか。本来、独立した教育委員会が管轄するはずの生涯学習計画や施策の基本的なあり方について調査審議することになる審議会の独立性、中立性はどのように確保されるかについてお伺いします。
次に、生涯学習審議委員と社会教育委員との関係について質問します。
双方を同数とするのは、2つの職務を兼務することになると理解します。そうであるなら、法的根拠のある社会教育委員の法で定められた職務の遂行に対して影響はないのか。市長とは独立した機関として、社会教育委員への委員会の諮問による調査研究、意見具申などは確保されるのか。生涯学習審議会委員と社会教育委員との関係についてお伺いをいたします。
以上、2点お願いいたします。

◯16番(野村羊子さん)  答弁ありがとうございます。生涯学習審議会委員と社会教育委員というものが兼務する。つまり、教育委員会が委嘱する社会教育委員は、同時に市長が委嘱する生涯学習審議会委員。ということは、社会教育委員の選定において市長の同意が必要ということになるのではないでしょうか。それは、そのことそのものが、そもそも政治的中立性を担保し得るのかという疑問は払拭し得ません。地方教育行政の組織及び運営に関する法律、教育委員会の職務権限というのに抵触するのではないか。政治的中立性を担保し得るのかどうか、社会教育委員のあり方について再度質問いたします。

◯16番(野村羊子さん)  議案第41号 生涯学習審議会条例制定について討論いたします。
本条例案は、市民の社会教育を含む生涯学習の振興と施策の総合的な推進を図るため、市長の附属機関として生涯学習審議会を設置するものです。生涯学習審議会委員は、市長が委嘱するものですが、教育委員会が委嘱する社会教育委員を兼任するものです。教育長は、この委員の選任について、任命権者それぞれが協議して発令するとしましたが、市長部局と教育委員会との調整がなければ同一人物への兼任発令は不可能であり、それはとりもなおさず教育委員会の独立性が損なわれる可能性があることを示しています。また、社会教育を啓蒙・啓発事業と捉えられる場合がありますが、本来、市民の学習権を保障するものとして設定され、また、実際に機能してきたものです。三鷹市における社会教育は、少人数による学習、生活から社会を見据える課題学習を通して、主体的な市民として育ち合う学びを保障し、これら市民が社会教育を担い、貢献してきた実績があります。
一方、生涯学習は幅広い市民のニーズに対応するとされていますが、学習主体である市民を教育の対象として教育サービスの消費者に位置づけるもので、学習権の保障からサービスを享受する権利の保障に変換させるものです。三鷹市生涯学習審議会を市長の附属機関として設置することは、長年市民の学習権を支え保障してきた社会教育会館を廃止し、社会教育法に基づかない公の施設として生涯学習センターを市長部局のもとに設置したこと、また、今議会において生涯学習課を市長部局に移管する組織条例の改正を提案していることと連動しています。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条において、スポーツに関すること、文化に関することは、市長において管理・執行することができるとされていますが、第21条12号、青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関することは、教育委員会の管理・執行によるとされています。したがって、社会教育を含む生涯学習を市長部局に移管することは、この法律に抵触する可能性があり、社会教育を含む生涯学習の管理・執行は、明確に教育委員会のもとで行われるべきです。
教育の政治的中立性・独立性が保たれるよう設置された制度をくぐり抜けるようにして、市長の附属機関として生涯学習審議会が設置されること及び社会教育委員の任命において、教育委員会の独立性が損なわれる可能性があることなどから、社会教育を含む生涯学習の政治的中立性・独立性が担保され得ない、危惧が払拭され得ないことから、この生涯学習審議会の市長部局における設置について、反対をいたします。


議案第42号 三鷹市多世代交流センター条例について

<賛成討論>
◯委員(野村羊子さん)  議案第42号 三鷹市多世代交流センター条例について討論いたします。
この条例は、東西の児童館を多世代交流センターに衣がえするために、児童館条例を題名も含め全部改正するもので、今まで1つの建物の1階と2階が別の施設であったものを一体化して4つの機能を持つ1つのセンターとするものです。東西2カ所の施設を同様に扱うものです。
本条例第8条、使用の不承認に(3)、特定の政党の利害に関する事業及び(4)、特定の宗教支持が入っていることは、憲法第18条、集会の自由を侵すものであり、遺憾です。答弁の中で、具体的な投票依頼を行う選挙活動や、信仰を広める布教活動という具体的な例示がされ、ある種の基準が示されました。恣意的な判断を極力避け、市民の権利を侵害しない運用をする方向が見えたというふうに思います。しかしながら、この条項があること自体が問題であることは、改めて指摘しておきたいと思います。
一方で児童館機能は、児童福祉法に基づく児童館に位置づけるということは評価をいたします。また、中高生、若者支援と居場所機能を付加することも、提案してきたことがようやく実現することであり、歓迎したい。
子どもの権利を尊重し、遊びを通して家庭でも学校でもない居場所として、成長発達を支える機能を児童から若者まで保障すること。乳幼児から児童までの子育て中の家庭をサポートすること。社会教育として、全ての世代に学ぶ権利を保障し、社会に参画する支援をすること。これらの機能を有機的につなげ、運営する職員体制を確保すること。質疑の中で確認されたことが確実に実現されることを期待して、本条例には賛成とします。


議案第48号 平成27年度三鷹市一般会計歳入歳出決算の認定について

〔本会計に対する反対討論〕
野村羊子委員(にじ色のつばさ)
2015年度予算は、3月では骨格、6月に肉づけ補正と2段階にわたって編成された。新市長として、補正において政策的な予算計上ができたのかを問うたが、計画の継続性の中ですべきことができたという答弁であった。
計画行政と言うが、一方で、国の補正予算による補助金・交付金事業への対応を迫られ、繰越明許がふえている。三鷹市が計画実施しようとしていた事業が、それによって影響を受けているのではないか。例えば、市内共通券事業にしても、通年使用可能な事業として検討を行っていたところ、国の交付金によるプレミアム商品券事業となり、本来検討していた事業が先送りされた実態があるのではないか。
繰越明許とともに、債務負担行為が多くなっている。決算カードによれば460億5,081万2,000円となり、地方債現在高より多くなった。指定管理の長期契約分を計上するよう国が指導しているということであったが、事業者にとっては運用がしやすいが、単年度決算を前提とする市の予算において、この事態をどのように評価するのか、債務負担行為ということ自体の再評価が必要ではないか。
経常収支比率は84%と下がったと言うが、債務負担行為、あるいは繰越明許が多いことは、財源の弾力性が広がったとは言い切れない。
「公共施設等総合管理計画の策定」事業について、私たちはこれまでも市民と情報を共有できる「公共施設白書」の策定を提案し続けてきた。策定準備段階の当該年度で市民意見の聴取が行われず、ほぼ確定段階にならなければ、パブコメなどの市民意見を聞かれないということは、やはり策定の過程において問題が残ると言える。
防災公園整備事業関係費、決算では61億4,405万円となり、当初44億5,313万8,000円から大幅に増加された。また、この防災公園関連での市債発行額は、51億3,140万円となり、市債全体の9割を占める。ほかの必要な事業を後送りすることにはなっていないのか確認したが、財政フレームの中であるというふうな答弁であった。しかしながら、財政フレームでの市債は、2015年度44億円であり、12億円増加している。この影響を説明できていない。説明が不十分である。
地方債残高も、防災公園事業を開始した2011年度から増加してきており、後年度負担への影響がある。財政運営として不安な要素が残る。
また、この防災公園事業に関連して、生涯学習センターを指定管理にしたということについて、やはり市民への説明が不十分であり、問題が残る。
社会保障・税番号制度について、準備が不十分なまま国が制度開始をしたことにより、システム障害等交付事務を負った自治体にとっては過大な負担がかかったが、これについて国からの対応、あるいはジェイリスからの対応がない。
また、行政機関同士であれば、本人の承諾を得て、情報連携が実施されてきた実態があるが、マイナンバー制度にすることによって追加の手間、エネルギー、費用がかかっている。さらに、民間事業者も同様な状態で、加えて健康保険組合などが本人の承諾なしにジェイリスから直接番号を取得できるということがあり、個人情報保護の観点からも、このマイナンバー制度に大きな問題があるということは改めて指摘しておきたい。
生活困窮者自立支援制度、関係機関との連携などで一定の成果があることは評価できる。今後家計相談支援事業などの実施により、より相談者の生活を立体的に支援することを提案していきたいと思う。
むらさき子どもひろばの改修に当たって、子どもたちの学童保育への夏休み臨時受け入れを実施したことは評価できるが、子どもたちの居場所機能としての児童館、今後東西の児童館改修に当たってこのことをしっかりと確認し、子どもたちの居場所を確保していくことを提案しておく。
関東で学校給食食材から放射性物質が検出されたという報道があった。丸ごと1食ではなく、危険性が高いとされる食材について事前抜き取り調査をすべきであるが、その時期に必要とされる内容への見直しも検討していないという答弁であった。
予防接種事業において、アレルギーについて市民に対する説明が不十分である。そのことについて今後大きな課題となる可能性があり、対応が必要である。
東京外郭環状道路に関しても、市民から工事の内容、進捗状況、将来的見通しなどについて不安の声が上がっている。「家屋調査」に対する市民への働きかけも始まっているが、この不安の声に対して市がしっかりと事業者に対し説明責任と安全の確保を求めるべきであるし、市民に対して市が説明していく責任もあると思うが、それが不十分である。
滞納整理において市税、国民健康保険税のみならず、保育所利用料、学童保育育成料等、市が徴収・集金をしているものが多々あるが、これについては回収・滞納整理において、生活の実態に寄り添う福祉の視点が重要であるとの答弁は評価できる。
執行に関しその他評価できる点はあるが、当初よりふえた巨額な市債発行を含め、看過できない点が数多く、本決算認定には反対とする。

平成27年度三鷹市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定について
〔本会計に対する反対討論〕

1 野村羊子委員(にじ色のつばさ)
2015年度は法改正により、都道府県単位化が決定し、その準備に入る年となった。法定外繰入額の縮小を求められ、三鷹市のみならず多摩地域各市は軒並み、2016年度に国民健康保険税を値上げする事態となっていった。市長が都道府県単位化のメリットが実現するには懸念があり、東京都国民健康保険団体連合会の委員として国へ要請行動を行ったとしたように、この都道府県単位化は、都下の自治体にとってはデメリットの懸念が大きく、地方自治を侵す事態にもなりかねない。今後の国民健康保険税のさらなる値上げを懸念し、広域化に反対の立場から、都道府県単位化の準備に取りかかった当該年度の決算認定に反対する。

平成27年度三鷹市介護サービス事業特別会計歳入歳出決算の認定について
〔本会計に対する反対討論〕

1 野村羊子委員(にじ色のつばさ)
介護施設において、介護福祉士等の処遇改善が求められている。処遇改善を図り、指定管理料が増となったとの回答があった。また、正職員を含めての離職率は、国の平均値より低いとの答弁があったが、非正規雇用の処遇改善・処遇状況が不明である。短期間不安定雇用では、サービスの質の向上は図れない。全てのサービス事業において、全体的な改善が必要であるとの観点から、本決算認定に反対とする。

平成27年度三鷹市介護保険事業特別会計歳入歳出決算の認定について
〔本会計に対する反対討論〕

野村羊子委員(にじ色のつばさ)
当初予算において、介護保険料の改正が低所得者層への値上げになるとして反対した。結果的に利用者負担が2倍になる人など、改正による負担増が相次いでいる。また、サービス内容を低下させることによって、何とか事業を維持しようとする事業者など、さまざまな影響が出ている。
地域包括支援センターの専門職増員は評価できるものの、社会的介護から遠のく介護保険改正に反対する立場から、本決算認定にも反対とする。

平成27年度三鷹市後期高齢者医療特別会計歳入歳出決算の認定について
〔本会計に対する反対討論〕

野村羊子委員(にじ色のつばさ)
高齢者への負担増となっており、保険制度としては成立し得ない制度であるとして廃止するしかないという従来の立場から、本決算認定にも反対とする。


意見書(案)第21号 チーム学校推進法の早期制定を求める意見書

◯16番(野村羊子さん)  意見書(案)第21号 チーム学校推進法の早期制定を求める意見書について、反対の立場から討論いたします。
学校の教員の多忙化は以前から問題となっていました。私自身、何年も前に、教員の事務負担軽減のために、学校事務職員の増員を提案しています。また、部活顧問になると休日が全くとれなくなり、ブラック企業と同じだとして、「顧問を引き受けない選択権を」とのインターネット署名には、2万3,500筆もの署名が集まるなどの動きもあり、教員の長時間勤務の実態が表面化してきました。
そこで、国会が継続審議中としているのがこのチーム学校推進法ですが、この法案にはさまざまな問題点があります。チーム学校推進法は3つの柱からなります。1つ目が教員の国家免許化であり、主幹教諭や指導教諭をふやすことです。また、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学校司書、部活動指導員などを学校職員として位置づけるとしています。
専門教員や専門スタッフを学校職員として位置づけ、増員することは必要です。そこで重要なのは、1年更新の非正規雇用ではなく、専門性を持つ職員として、中途採用も含め正規職員とすることですが、正規職員としての雇用になるのかの保障は全くありません。指導教員をふやすことは、その教員が過重労働になる可能性があるということであり、一方で職階制を強化することは、教員同士の分断、孤立を生じさせる可能性が高いと言えます。それよりも今必要なのは、クラスの人数を減らし、少人数学級にすること、すなわち1つの学校のクラス数をふやすことで、クラス担任を担う正規職員をふやし、行事や教科指導の役割分担を分かち合える、同じ立場の人間をふやすことです。
少人数学級は、教員が丁寧に子どもたちと向き合うことを可能にもします。今、クラス担任を非正規教員が担う実態が散見されていますが、それはとりもなおさず正規教員の負担が増すということでもあります。業務の適性化も必要ですが、仕事も悩みも分かち合い、支え合える関係を教員同士がつくることのできる環境整備がより必要だと考えます。
チーム学校推進法の柱の2つ目は、コミュニティ・スクールの推進です。地域の住民の関与をふやすことは三鷹市が先進的に取り組んできたところです。小・中一貫校を実施したときに何が起こったかといえば、教員の多忙化でした。連携のための連絡調整、交流事業や保護者等が授業のサポートに入るための準備とコーディネートなどの業務が新たに発生しました。地域の住民に開かれた学校であることと、教員の多忙化解消とは次元の違う問題なのです。
3つ目の柱は校長の権限強化です。さまざまな職種の人間が存在する職場、さらには地域の住民との関係構築等において、校長のマネジメント力の強化が必要とされています。しかし、職員会議を単なる連絡事項伝達の場にし、学校運営、生徒指導について教職員全員で分かち合う場がなくなったことにより、教員の孤立化がさらに高まり、いじめ放置の問題の重篤化がさらに進んだのではないでしょうか。
本意見書では、教員の多忙化に対応するための正規教員の増員を図ることには触れられていないこと、専門スタッフも正規職員として位置づけ、同等の立場で児童・生徒を支え育む体制とはほど遠いチーム学校であること、教員の管理強化にしかならない校長の権限強化には触れずに、チーム学校推進法の早期制定を求めていることなどから、本意見書には反対といたします。


意見書(案)第23号 「同一労働同一賃金」の実現を求める意見書

◯16番(野村羊子さん)  意見書(案)第23号 「同一労働同一賃金」の実現を求める意見書について、反対の立場から討論いたします。
今や全労働者の4割までふえた非正規労働者、そのうち約7割が女性です。2015年の正社員の平均給与は484万9,000円、非正規は170万5,000円で正規の35%にしかならず、格差は拡大しています。
私は、女性が生きやすい社会を目指す活動にさまざまな側面から取り組んできました。その一環として、今議会の一般質問では、非正規公務員の処遇のあり方について取り上げたところです。したがって、非正規労働者の賃金や処遇改善については私も心から望むところですが、今回提案された意見書の内容では、正規と非正規との間の格差是正は実現できない上に、運用によっては、逆に正規の賃金を非正規レベルまで引き下げることが理論的に可能になるおそれがあります。
そもそも欧米では同一労働同一賃金法は約50年前に制定され、現在、国際標準になっているのは同一価値労働同一賃金です。これは、職務評価システムを、ジェンダーなどあらゆるバイアスや差別がないようにシステム設計するもので、国際基準となっているILO基準における職務評価は、職種にかかわらず4つのファクター、すなわち労働環境、負担、責任、知識・技能を点数化し、その点数が同じであれば同じ賃金という考え方で設計されています。
例えば看護師と電車運転手などのように異なる職種、職務であっても、評価結果の得点が同じであれば労働の価値が同一とされ、正規、非正規、パート、有期、派遣にかかわらず、性別にも関係なく、同一の賃金を支給するものです。今回の意見書の問題点の第1は、この同一価値労働同一賃金のもととなる国際基準による職務評価の導入について全く言及していないことです。
第2は、同一価値労働同一賃金の実現の場合、正社員の賃金、待遇を現状より下げることで非正規社員との格差を縮小することはあってはならないことを明記すべきですが、この下方修正による誤った待遇格差の是正になるおそれが拭い切れないことです。
第3は、社員のキャリアアップの方法論と目指すべきキャリアアップの度合い、内実の具体性が明らかではないことです。どのようなキャリアアップをするのか、昇進による管理職登用があるのか、非正規から正社員への転用があるのか、全く不明です。
第4に、ワーク・ライフ・バランスに資する多様な正社員については、配置転換、転勤等を課さない限定正社員を想起させ、正社員を細分化し、正社員の中の差別待遇をさらに生む可能性があることです。
第5は、独自の雇用慣行や中小企業への適切な支援にも十分留意し、とありますが、具体的に何を指しているのか明示されていないため、企業に都合のよいように、いかようにも解釈、運用される可能性が大きく、結果、待遇格差が温存され、待遇改善がされない懸念があることです。
第6は、不合理な待遇差を是正するためのガイドラインの策定を示していますが、現行法、労働契約法第20条、不合理な労働条件の禁止において、このガイドライン的なものは明示されています。残念ながらこの条文の適用が大変難しく、幾つもの裁判で争われている実態があります。したがって、ガイドラインに相当するものを策定するのであれば、今以上に実体性のあるものでなければならない。しかし、そのことが全く明示されていません。
第7に、経営の厳しい中小企業への支援がありますが、補助金、助成金制度、これについても、モラルハザードを発生させないような対応が必要だというふうに考えます。
以上、この意見書は同一労働同一賃金の実現を求めていますが、内容は国際基準であるILO基準の職務評価による同一価値労働同一賃金とはほど遠い内容であり、実質的に非正規格差是正には至らない可能性が高く、問題も多々あるため、残念ながら反対といたします。


意見書(案)第26号 「基本合意」と「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」の実現を求める意見書

◯16番(野村羊子さん)  意見書(案)第26号 「基本合意」と「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」の実現を求める意見書について、賛成の立場から討論をいたします。
本年5月に成立した改正障害者総合支援法は、残念ながら障がい当事者たちの思いを込めた2010年の障害者制度改革の推進のための基本的な方向について(以下、「基本合意」)及び2011年の障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言・新法の制定を目指して(以下、「骨格提言」)が反映されたものとはなりませんでした。確かに運動機能の障がいや知的の障がいがなかったり、軽かったりする医療的ケアが必要な子どもたち、医療的ケア児に対する支援が盛り込まれるなど、画期的な側面もあります。一方で65歳以上の介護保険優先の原則は廃止にならないなど、むしろ当事者への負担増となる部分もあり、全体としては改悪とさえ言えるとの声があります。
共同作業所など障がい者の地域に根差した生活を支援する団体・事業所などでつくる共作連の声明では、何よりも国は、本法案が上程される前段より、財政制度等審議会が障がい福祉サービスの利用者負担について、軽減措置の経過措置の廃止をあからさまに主張したり、最近では、厚生労働省内に設置されている新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチームが、露骨に介護保険サービスと障がい福祉サービスの事業所兼用の方針を打ち出すなど、基本合意や骨格提言とは真逆の施策を平気で方向づけしている。つまりは今回の法改正の真の目的も財政の効率化であり、障がい者の自立支援というよりは、公的責任の後退と放棄であり、憲法25条の見直しが国の究極の狙いであるとするならば、今回の法改正はその序の口にすぎないと言えると危機感を述べています。
障がいがあってもなくても、その人権が保障され、ともに生きていくことのできる社会をつくるために、福祉施策の充実、福祉サービスへの財源投入が必要です。障がいの種類・程度を認定し、利用サービスが決められる制度は、逆に障がい者差別に加担することにもなりかねません。一刻も早く基本合意と骨格提言を反映した障害者権利条約によって立つ障がい者支援制度の確立を求めて、本意見書(案)に賛成といたします。


28請願第4号 三鷹市教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例に伴う組織改正に反対し、再考を求める請願について

◯16番(野村羊子さん)  28請願第4号について討論いたします。
本請願は、今議会に提案された議案に反対し、再考を求めるものです。先ほどの議案は賛成多数で可決されておりますが、にじ色のつばさは、教育の政治的中立性・独立性の確保に懸念があるとして議案に反対した立場から、本請願に賛成といたします。