7月17日(水)のチラシポスティング裁判の判決は、全面勝訴です。
この裁判は、市議会議員の政治団体「野村羊子といっしょにつくる三鷹の会」のニュースが、自宅ポストに投函されたことにより精神的苦痛を被ったとして、その政治団体が住民に訴えられた民事訴訟です。
ポスティングは、立川テント村裁判の判決が出た際に「住居侵入」とのみ報じられた結果、エントランスの集合ポストへの投函も違法行為のように捉えられていますが、実際はそうではありません。判例では、エントランスの奥の居住区域に、各戸のドアポストにポスティングする目的で立ち入った行為を住居侵入としたのです。
今回のような集合住宅のエントランスに設けられた集合ポストへの投函は、表現の自由の観点からも、違法性がないことを明らかにしていきたいと考えて、少額訴訟として提訴されましたが、きちんと判決を出す民事訴訟として扱うよう求め、2回の口頭弁論の後、今回の判決となりました。
判決では、エントランスに「関係者立入禁止」と表示してあっても、政治活動のチラシを集合ポストに投函する目的で立ち入ることは不法行為ではないこと、ポストに投函拒否の意思表示がされていても、チラシ1枚の投函は慰謝料請求にはあたらないこと、の2点が述べられています。
ポスティングでエントランスに立ち入ることは不法ではない、チラシ拒否と表示されていても政治活動のチラシ1枚を入れてもいい。このことは、今後の活動を支える根拠となります。正当な判断が出されたことに、安堵する思いです。
万が一、相手側が控訴する場合は、東京地方裁判所立川支部で取り扱うこととなります。2週間後、7月末までが期限です。
概要と裁判所の判断を、判決文から引用します。
事案の概要
本件は、原告が居住するマンション1階の集合郵便受けに被告(野村羊子といっしょにつくる三鷹の会)のチラシが1枚投函されたことについて、原告が被告に対し、同郵便受けの設置されている1階部分は関係者以外立ち入り禁止の表示がされているのにこれに反して進入し、原告の郵便受けにはチラシ投函拒否の表示がしてあったのにこれに反してチラシを投函したため、原告は著しい不安を感じる等の精神的苦痛を受けたと主張して、慰謝料及び(略)延滞損害金の支払いを求める事案である。
当裁判所の判断
2 本件マンションの構造、原告がマンションの一室を賃貸している者であって他の貸借人も存在すること、被告会員は被告代表者の政治活動等を周知する目的でそれを記載したチラシを投函するためにエントランスホールに入り、本件チラシを集合郵便受けに投函しただけであることを考慮すれば、エントランスのドアに「関係者以外立入禁止」との表示があったとしても、エントランスホールに立ち入ったことが不法行為には当たるとか認められない。
3 また、原告が使用する●●号室の集合郵便受けへの本件チラシの投函は、前記の通りチラシ投函を拒否する旨原告の意思が表示されていたのであるから、原告の意に反したものと認めることはできるけれども、チラシ1枚が投函されたことによって不法行為上の慰謝料を発生させるほどの精神的苦痛が生じたとは認められない。
4 よって、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求は理由がないのでこれを棄却することとし、主文の通り判決する。
武蔵野簡易裁判所 裁判官 内山修