2019年1月15日に東京地方裁判所103号法廷にて開かれた
『東京外環道大深度地下使用認可取消、無効確認訴訟』 の
第4回口頭弁論。
野村羊子の原告意見陳述を紹介します。
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2019年1月15日 第4回口頭弁論 原告陳述原稿
野村羊子
原告の野村羊子です。
私が26年間居住し、12年間市民の負託により市議会議員を担っている三鷹市
には、東京外環道の巨大インターチェンジとジャンクションの複合施設が建設
されようとしています。東西で約85メートルから150メートル、南北が約550
メートル、菱形のような地形の中を開削で堀り下げ、掘削の深さは約15メートル
から30メートル、10階建てビルを埋められる深さ。中央道の北側だけでおおむね
100万立米の土砂等を搬出する予定です。その巨大な穴の中に、大深度40m
以下にできる本線トンネルと地表の東八道路、さらに高架の中央道とをつなぐ
ランプウェイ8本を折り重ねるように建設します。加えて本線トンネルから排気
ガスを吸い上げ、粉塵除去装置を経て、地表15mの煙突から100m上空まで
吹き上げるこれまた巨大な排気塔を2カ所建設するという前代未聞の工事です。
地元ではもちろん工事中の振動・騒音、粉塵被害の問題もありますが、完成後は
排気塔によるPM2.5を含む大気汚染が課題です。三鷹市は、南北に吹く風が
季節を通じて多い地域です。しかも南風は北北西に傾きますので、この排気塔
から排出された排ガスが、私の住む下連雀地域、三鷹市内の人口集中地域に
も降り注ぐことになります。
また、工事現場に最も近い北野小学校は、農地が多いにもかかわらず、
北に東八道路、南に中央道があるため、ぜんそく罹患率が高い地域です。
そこに今の倍以上の交通量となる外環道のインターチェンジ・JCTに加え、
トンネル内約9kmに及ぶ排ガスがそれぞれ排出されるわけですから、
さらなるダメージとなり、ぜんそくや肺がんの被害が心配されます。
しかし、環境影響評価では、この巨大な排気塔の影響をきちんと評価して
いないどころか、集塵設備では除去できないPM2.5の影響を全く考慮
していません。環境基準は守られるべきです。環境基準が満たせない設備を
作ることは違法だと言わざるを得ません。
さて、三鷹市は、上水道を東京都に移管していますが、現在でも上水道の
6~7割が地下水のくみ上げによって賄われています。市内にある水道水源
井戸は31ヶ所ありますが、そのうち約半数の14ヶ所が、この東京外環道沿線
500mの範囲内にあるのです。
水は命のもとです。飲料水となる地下水が、セグメントや裏込め剤に接しても
本当に汚染されないのか。気泡シールド工法による注入薬剤で汚染されな
いのか。水質検査をしてほしいと何度言っても、その確約がえられません。
地下の構造は、実は掘ってみなければ分からないと専門家は口を揃えて
言います。事実、東名JCT工事現場では、酸欠ガスや地下水噴出事故が
相次ぎました。土丹層、堅い地層だから大丈夫と言っていた事業者の言葉は、
全く当てにはなりませんでした。実は工事ヤード以外にも、近くの清水川が
夏の枯渇期にもかかわらず水が流れるようになったり、民地に水がしみ出したり
という影響が出ていることが明らかになっています。地下水の流れが変わって
いる可能性があり、事業者の予測もつかない影響が実際に出ているのです。
地表に影響がないから、地権者には何の補償もなく、どこをどう掘るといった
具体的な事実をお知らせすることもないまま、人の家の地下にトンネルを
掘ることを可能とした大深度法ですが、その根本から崩れています。
三鷹市での事業範囲は延長約3.3キロ、家屋調査の対象は2,000軒に
及びました。安心して深呼吸できる空気、安心して飲める水、安心して
暮らせる家、それが外環道によって壊されるのは耐えられません。
最後に強調したいことは、都市計画決定に至る手続きやパブリック・インボルブ
メントはまやかし以外の何物でもなかったということです。今まで行われた課題
検討会や説明会、オープンハウス等々は、住民の疑問に答えることなく、
不十分な説明のみに終始し、住民を愚弄するものでした。決して住民合意が
得られたと言えるものではありません。
加えて、現実に起きている酸欠ガス継続的噴出や地下水の複数箇所での噴出の
影響を過小評価し、ないもののように扱った上で、東名JCT工事ヤードからの
民地への本格掘削開始の説明会を、世田谷区対象だけに狭めて実施し、沿線
区市は無視して説明会を開かないまま、シールドマシンが到達する直前に
周辺にチラシを配布するだけとする対応は、沿線の自治体をも軽視している
ことで許し難いことです。
2019年1月26日に大泉JCT工事現場において、シールドマシンの発進式を挙行
すること、および、1月中旬にシールドマシンが東名JCT工事ヤードより外の
民間の住宅地に出て本格掘進をすることに対し、国土交通省と東日本高速道路
株式会社、中日本高速道路株式会社に対し強く抗議をします。裁判長におかれ
ましては、地表に影響を及ぼさないとした、大深度法の大前提が崩れている現状
を事実として認め、今後の被害防止が可能となるよう訴訟指揮をしていただく
ようお願い申し上げ、本日の意見陳述を終わります。